加藤貴仁 コーポレート・ガバナンスは、様々な形で定義されている。しかし、経営者の報酬など、伝統的に会社法による規制対象とされてきた問題が分析される際、それは、株主と経営者のエージェンシー問題を解決する手段として位置付けられている。言い方を変えれば、「良きコーポレート・ガバナンス」とは株主と経営者のエージェンシー問題を解決し、株主利益を向上させる仕組みとして理解されてきた。しかし、2007年から2008年にかけて深刻化した世界的な金融危機は、このような「良きコーポレート・ガバナンス」によって、金融機関の健全性が害される可能性があるのではないかとの懸念を生み出したように思われる。 金融機関の健全性を維持することは、金融規制の重要な目的の一つである。しかし、株主利益と金融規制の目的が相互に対立する可能性があることに留意されるべきである。そのため、金融規制を構築する際に、金融規制の目的を達成するた