いけだ しょうじゅ/一九九八年二月 其の一 筒井康隆『敵』。 この本は、JIS漢字論的にいうとものすごい本だということに気付きました。といってもまだ途中までだし、「JIS漢字論」って何?といわれそうですが、まあ、聞いてください。 擬音語がすごいのですが、「信子」の章に出てくる「躯躯躯躯躯」には思わず 興奮してしまった。 笑い声「ククククク」に身体性(「躯(からだ)」)を被せているわけですが、実は「躯」の字は78JISと83JIS以降で非互換な字体変更が為された、いわく付きの字なのです。「身區」(78JIS)から、「身区」(83JIS)へ。この非互換な変更は女性の持つ、二面性を的確に表現し得ています。ある時は淑女、ある時は娼婦ように、ってのですね。 さらに変更部分に着目すると「口」と「メ」とが取り出せ、ここから「メロメロ」という語を取り出せる。さらに「口」や「メ」から男女の身体部位を連想する