滅びゆくサヨクと語学教師の失業対策 吉見俊哉『カルチュラル・スタディーズ』講談社 数年前まで、「マス・コミュニケーション学会」というのに所属していたことがある。たまに学会に出ると、「カルチュラル・スタディーズ」と銘打った発表がやたらに多いので、何かと思ってのぞいてみると、内容は映画や漫画に小むずかしい理屈をつけただけだった。これは発表者の頭が悪いだけなのかと思って解説書を読んでみたが、何のことはない、全部その手の「文化的雑談」なのだ。 この中心となっているのが、著者も所属する東大の社会情報研究所である。もとは占領軍によって新聞研究所として作られたが、斜陽産業の新聞ばかり評論していても先が見えているので、「社会情報」という意味不明の名前がついた。もとは文学部の3類(社会学・心理学)と一緒になって「社会情報学部」を作ろうと画策したが、文学部に断られたそうだ。それはそうだろう。社会学や心理