社会政策・労働問題研究について歴史的なアプローチで研究しています。ここではそのアイディアやご迷惑にならない範囲で身近な方をご紹介したいと考えています。 稲葉さんの新刊を勧められたので読んでみた。この本のコンセプトは「社会学の側から世界を見る」のではなく、「世界の側から社会学を見る」という点にある。しかし、もう少し詳しく見るならば、ほぼ「(社会)科学」における社会学の位置づけを方法から試みているといえばよいだろうか。それも方法の参照基準はいわゆる最近の正統派経済学である。 この本は理論を何種類にも使い分けているので、最初は何を言いたいのかよく分からなかったが、約まるところ、グランド・セオリーは無理ということだろうか。調査や歴史研究をやるときの(橋頭堡としての)理論仮説と世の中をまるごと説明してやろうというグランド・セオリーは最初から性格を異にしている。 稲葉さんは社会学における歴史研究が「他