『ジョーカー・ゲーム』、期待どおりの楽しい映画でした。 「傑作」という言葉を使う映画ではないけれど、すごく「楽しい」スパイ映画。 入江悠監督がさまざまなインタビューで言及しているとおり、この映画の立ち位置を海外のスパイ映画に照らし合わせて言うならば『ミッション:インポッシブル』シリーズ、特に最新作の『ゴースト・プロトコル』でしょう。現実の政治や世界情勢を反映させ、一定のリアルさは保ちつつも、派手なアクションや軽妙な描写を満載して、一歩だけ荒唐無稽なほうに寄った、楽しい楽しい娯楽映画。 原作の『ジョーカー・ゲーム』は、もうすこし地味な作風です。現実の第二次世界大戦前夜とは異なる、パラレルワールドな世界を舞台にしているとはいえ、物語の雰囲気じたいは映画ほどに陽性ではない。 では、なぜ映画は陽性の雰囲気に振り切ったのか? 作り手の戦略を読みつつ、ぼくが最近のスパイフィクションと照らしあわせて考え