五:パラダイムシフトした《吹奏楽》 オーケストラのマネージャーをしている友人が全日本吹奏楽連盟の方とお話した時に「吹奏楽(コンクール)はスポーツですから」と言って退けられて唖然とした、と話してくれたことがある。「全吹連からしてこういう考え方だから、吹奏楽業界の音楽性が育たないんだよなーっ」と彼は嘆いていたが、この競技性によって日本の吹奏楽編成は滅びずに済んだのも事実なのだ。 第二次世界大戦後の日本で、軍楽隊の解散やレコード・放送音楽の発達から、再生メディアとしての訴求力を失った吹奏楽の編成は、教育分野で(この試み自体は戦前から始まっていたが)再整備されることによって生き残ることが出来た。そのパラダイムシフトの牽引をしたのが戦後本格的に再始動した全日本吹奏楽コンクールであることは間違いない*1。 「聴くするもの」ではなく「吹く(演奏する)もの」、「成熟した楽しみ(深み)」より「成長(上達)す