人の記憶は本当に頼りないもので,だれしもその限界には悩まされる。友人の電話番号や担当者の名前をうっかり忘れたり,愛読書の題名を思い出せなかったりする。そこで,さまざまな戦略を用いて忘却と戦う。メモを書きつけた付箋を貼ったり,携帯電話やPDAのアドレス帳を利用したりする。だが,肝心なことほど記憶の網の目からこぼれ落ちてしまうものだ。そんな状況を改善しようと,マイクロソフトリサーチに所属する私たちのチームは,数年前から生活のあらゆる面のデジタル記録に挑んできた。その手始めに,私たちの1人(ベル)の生活を記録してきた。過去6年間,ベルが交わした会話や機械の操作,目で見た景色,耳で聞いた音,閲覧したウェブサイトのすべてが,個人デジタルアーカイブに安全に保存されており,検索することもできる。 このようなデジタルメモリーは,過去の出来事や会話や仕事を思い出す手がかりになる。しかし,デジタルメモリーの可