『公研』2024年1月号「issues of the day」 ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・ハマス軍事衝突に世界の目が集まる陰で、30年以上続く一つの紛争がある種の「解決」に達した。アゼルバイジャン領内でアルメニア人が多数派となっていたナゴルノ・カラバフをめぐる両国の争いである。2023年9月、アゼルバイジャンが始めた攻撃を前に、この地域を実効支配してきたアルメニア人勢力はあっけなく敗北した。彼らがつくる非承認国家「ナゴルノ・カラバフ共和国」(アルツァフ共和国)も、32年の歴史の幕を閉じた。 相反する二つの動き アゼルバイジャンの行為は、軍事的優位を背景に武力で領土を確保しようとした点で、侵略戦争を「特別軍事作戦」と言い換えたロシアのウクライナ侵攻と重なる。異なるのは、それに成功してしまったことである。 この地方ではソ連末期の1980年代から、両民族間で対立が激化し、虐殺が相次いだ