山本七平をどのように評価するかという作業が黙過されている。これはよくない。 山本七平はイザヤ・ベンダサンの筆名で『日本人とユダヤ人』を世に問うて以来、一貫して問題作を書きつづけてきた。その論旨には山本七平学ともいうべきものがあったにもかかわらず、ほとんど軽視されている。在野の研究者だからといって、これはよくない。論旨の内容の検討を含めて議論されるべきだ。 ぼくは二度ばかり山本さんと会って、これは話しにくい相手だと感じた。屈折しているのではないだろうが、世間や世情というものをほとんど信用していない。そのくせ、山本七平の主題は日本社会のなかで世間や世情がどのように用意され、どのように形成されてきたのかということなのである。 こういうところが山本七平を議論させにくくさせているのかもしれないが、だからといって放っておかないほうがよい。丸山真男・橋川文三・松本健一とともに、そのホリゾントの中で評価さ