(1面から続く) 今年5月、ネット上に投じられ、議論の輪が広がった文書がある。水面に放り込まれた石のように。 「不安な個人、立ちすくむ国家」と題された65ページの文書を作ったのは、経済産業省に所属する20代、30代の官僚30人。ダウンロードは140万回を超え、ネット上で賛否が渦巻いた。 内容は、国家官僚が作成したとは思えないものだ。何しろ、「国家が立ちすくんでいる」ことを認めているのだから。 「現役世代に極端に冷たい社会」「若者に十分な活躍の場を与えられているだろうか」。少子高齢化、格差と貧困、非正規雇用、シルバー民主主義などの現実を背景に、そう文書は問題提起する。 なかでも目を引くのは、「昭和の人生すごろく」という言葉だ。「昭和の標準モデル」を前提にした制度と価値観が、変革の妨げになっている。つまり、終わった昭和にすがり付いているのが日本だという。 平成世代の官僚が、文書の作成にかかわっ