江口 真透 (統計数理研究所,総合研究大学院) 「現在過去未来」についての原稿依頼がきた.タイトルは茫漠としており,私の狭い研究の興味の範囲,与えられた能力をはるかに超えている.通常の感覚では,依頼を断り自分の研究・教育に専念する方が良いに決まっている.自分の無能さを冷静に見れるだけの苦い経験は積んでいるし,これを論ずるべきもっと適当な人々がいるにちがいない.このように考えた結果,丁重にお断りしようと思った.正直言ってほんの1・2年前までは,統計学の将来に何の疑問点も持っていなかった.「日本の統計学は,その長い活動の歴史の中で輝かしい実績を挙げ,今後も着実な成果が期待されている.多種多様な分野において,データを得るための計画から得られたデータに基づいてなされる統計推測まで,著しい貢献が将来に渡って約束され,統計科学は輝き続けるだろう.」こう信じていた.しかしながら現時点1999年は,まさに