(2012年11月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) ドイツでは2002年の総選挙の後、政府が労働・福祉分野を中心とする一連の経済改革に乗り出した。ドイツ経済は2005年頃まで伸び悩んだが、その後は着実に回復し、2009年の景気後退までそれが続いた――。 事実は確かにこの通りだ。しかし欧州では、この改革が新たな「ドイツ経済の奇跡」をもたらしたという物語が流布している。 前後即因果の誤謬 この物語は前後即因果の誤謬、つまり、Aという出来事はBという出来事より先に起こったからAはBの原因だという誤った認識の一種にほかならない。まず改革が行われた。その後、経済が成長した。したがって両者の間には因果関係があり、したがってこの図式はほかの国にも適用できるというわけだ。 欧州の当局者は一人残らずこの議論の連鎖を受け入れているらしく、これによる誤ったロジックを今度はフランスに当てはめようとしている