1.はじめに 2.障害者運動の「新しい波」と青い芝の会 3.鏡のなかの〈健全者文明〉 4.〈障害者文化〉の創造 5.自律と対抗のパラドックス 6.おわりに ※校正が終っていませんので,掲載される論文はここに掲載する原稿と少し異なるものになる可能性があります。この点,ご承知おきください。 1.はじめに 『現代思想』95年3月号に掲載された「ろう文化宣言」(1) に、とまどいをおぼえる福祉関係者は少なくあるまい。ろうとは障害ではない、ろう者とは手話という独自な言語を用いる言語的マイノリティであるとするその主張は、近代医学の言説とそれを追認する実体主義的障害観に真っ向から挑戦するものだった。専門誌とはいえ、一般メディアでこうしたマニフェストがなされたことの意義は大きい。もちろん、ろう文化運動自体はここにきて急に始まったものではない。既に欧米では、以前から多くの論客により同趣旨の発言が繰り返されて