私は子供だったらしい。 らしい、というのは私には子供だった頃の記憶が無いからだ。 突然記憶が途切れたのではなく、時間とともに忘却してしまったのだと思われる。 だから親に「はじめまして」と言うタイプではない。私にとって親は昔からオンリーワンだ。 子供の頃の私が分からないから、どういうテレビ漫画を好んでいただとか、どんな音楽が聴いていたとか、そういう話が全くできない。 私の実家は小さく、私に関するモノは殆ど残されていない。 親から聞いた話によって、私がどんな子供だったかを知ることがある。 まず、相撲が好きだったらしい。昔は大柄で、「大きくなったら御相撲さんになりたい」などと宣っていたようだ。 大会でもそれなりの成績を残したということを聞かされている。 また、本が好きだったことも分かっている。家の押入れに、私が読んだと思われる本のリストが入っていた。 今では本など全く読まないのだが、当時は推理小