グレイヴが初めて用いられたのは1854年である。当時、英国はクリミア半島にてロシア軍と激しく衝突、これは近代化された軍同士の初めての大規模戦闘となった。 近代戦に於ける大きな特徴は「すべての兵が銃を装備していること」である。白兵突撃を基本としていた中世の戦闘と異なり、銃火戦闘では身を晒した側に圧倒的な不利がある。そこで防御陣地として、地面に溝を掘り砲火を避ける塹壕が用いられた。 塹壕には兵士が完全に身を隠したまま移動可能な深さが求められる。およそ深さ、幅とも2m以上が要件であるが、これを兵士が手作業で掘るには相当な労力を要する。交戦前の陣地構築だけで1週間以上を要したこともあったようだ。 あまり時間をかけていては構築前に砲撃を受けかねない。また自軍の準備が早期に整えば、それだけ大きなアドヴァンテージを得ることになる。そこで考案されたのが、蒸気機関による塹壕掘り用の作業機械であった。 蒸気式