今季も終盤戦に突入し、一戦一戦の重要度が増してきた。あと１勝でＪ１年間勝ち点が過去最高となる大宮は今節の１７日に、ホームで年間勝ち点と第２ステージ双方で首位に立つ川崎を迎え撃つ。川崎は、勝てば年間王者を決めるチャンピオンシップ（ＣＳ）出場が決定。お互いに大きな一歩がかかった試合だ。 今季２年ぶりにＪ１を戦っている大宮。２００５年以降、１０年連続Ｊ１残留を続けてきたチームは、１４年に挙げた勝ち点４５がＪ１で過去最高だ。今節勝てば勝ち点を４６まで伸ばせるが、チームの歴史を変える１勝を手にできるか。 過去Ｊ１で一度も１桁順位がない。今季は残り５試合で、年間順位は７位につけている。１０日の広島戦（Ｅスタ）に勝利し、現在５試合連続負けなしと好調を持続。同戦後、渋谷監督は「選手の努力の結果」とコメントしており、このままいけば、過去最高成績は確実な情勢だ。 一方の川崎は、第１ステージ優勝を勝ち点１差で逃

第１ステージ５位の大宮はロスタイムの劇的弾で今季２戦２勝と相性のいい名古屋を下した。エース家長が欠場し退場者が出て守備を固める相手を攻めあぐねたが、最後の好機に攻め上がった河本がロングボールを右足で合わせて決勝点。３月の柏戦以来となるホームでの勝利を決めた殊勲者は、子供が生まれた奥井らとゆりかごダンスで喜びを表現し「ようやく勝てた。これからはもっと地元でサポーターを喜ばせたい」とさらなる奮起を誓った。（ＮＡＣＫ５）

Ｊ１リーグ戦で４位（第１ステージ第１４節終了時点）の大宮は、ヤマザキナビスコ・カップでも１次リーグ無敗で準々決勝進出を決めた。今季公式戦に出場した選手は実に２７人にのぼる。日本代表選手がいない半面、誰が出ても遜色なく力を発揮できるのが今の大宮の強みだ。 そんなチームでじわり頭角を現してきたのが、明大から今季加入したセンターバックの山越康平（２３）。ナビスコ杯では、チームで唯一、１次リーグの全６戦にフル出場。Ｊ１リーグ戦ではなかなか出場機会に恵まれなかったが、直近の２試合（第１ステージ第１３、１４節）で先発を勝ち取った。「１日１日を大切にしたい」。ルーキーの言葉は頼もしい。 身長１８３センチ、体重７８キロの数字以上に大きく見えるのは、空中戦でも競り負けない体幹の強さがあるためか。「学ぶべきことが多い」という同じポジションの先輩、菊地光将や河本裕之のプレーを見て、ジャンプの効果的なタイミングな

５月４日のＪ１第１ステージ第１０節は、アジア・チャンピオンズリーグに出場している４チーム（浦和、ＦＣ東京、Ｇ大阪、広島）を除く１４チームによる７試合が行われ、大宮のＭＦ沼田圭悟が時速２４キロ以上のスプリント（ダッシュ）を４１回記録し、今季初めて１位に輝いた。沼田はこの試合でＪ１初得点もマーク。チームも福岡に２－１で勝利し、「素直にうれしい」と喜んだ。 異色の経歴の持ち主だ。２００９年に高崎経大付高（群馬）を卒業後、ブラジルに留学。複数のクラブに所属し、帰国後の１２年にＧ大阪とプロ契約を結んだ。Ｇ大阪ではリーグ戦の出場機会はなかったが、１４年に移籍したＪ２讃岐で経験を積み、今季大宮に加入した。 運動量豊富な左利きのサイドバック。今季の目標を「多くの試合に出る」と掲げ、開幕戦からスタメンを勝ち取った。第５節以降はその座を明け渡していたが、ようやく今節の福岡戦で先発復帰。なかなか試合に出られなか

今季Ｊ１に昇格した大宮で、将来の中心選手と目されているのが、地元さいたま市出身のＭＦ大山啓輔（２０）だ。プロ２年目の昨季は出場機会を大きく伸ばし、着実な成長を印象づけた。小学６年生から大宮の下部組織で練習に打ち込み、チームへの愛着は「誰にも負けたくない」と語る。端正なマスクで女性ファンも増えており、まさに売り出し中の選手だ。 身長１７４センチ、体重６２キロ。中盤ならどこでもできるが、理想のポジションはボランチだ。苦しい時間帯にボールをキープして落ち着かせたり、相手の嫌なスペースにパスを供給したりと、状況判断に優れている。大山自身は「派手なプレーはないけど、展開を浄化できる」と独特の表現で持ち味を表現する。 昨季はＪ２ながらリーグ戦１３試合に出場。Ｊ１で戦った１４年シーズンはリーグ戦に出場できなかったことを考えると大きな進歩だ。昨年３月１５日のＣ大阪戦（第２節）では、右サイドからのクロスで味

２点差をひっくり返しての劇的な勝利に、スタンドはお祭り騒ぎと化した。試合終了の笛が鳴ると、選手は両手を突き上げて優勝の味をかみしめた。胴上げで４度宙を舞った渋谷監督は、「本当に幸せ。選手を誇りに思う」と笑った。 リードを許しても決して諦めなかった。ムルジャが２ゴールを奪って追いつき、後半４３分に家長がＰＫを決めて勝利を手繰り寄せた。「絶対ひっくり返せると信じていた」とムルジャ。劣勢から勝ちきった展開は、今季の強さを象徴していた。 昨季は勝ち点差「１」でＪ２に降格した。悔しさが今季を戦う原動力だった。菊地は来季を見据え「Ｊ１は厳しい舞台。レベルアップしないと」と表情を引き締めた。自分たちの居場所がＪ１であることをピッチで証明する戦いが始まる。（浜田慎太郎）