Back Index Next オルフェ殿下はあたしをまっすぐに見て、口にした。 「貴女は帝国の姫君で、この国は帝国領なのです。ぼくは貴女に抵抗できるだけの力がない。貴女の、というより、陛下のご意向はもっともなことです。くりかえしますが、エリスを女公爵にして、その夫に親帝国派で武勇を謳われる名門ヴジョー伯爵を迎えれば、帝国としては安心していられるでしょう」 あたしは頷くこともしなかった。 彼は自分が死ぬことで何もかもがうまくいくと考えている。ただし、それはエリスが無事でいてこそのことだ。 あたしは月の君に信用されていない。《死神トト》を寄越されたってことは、そういう意味だ。 でも、そもそもの始めから、あたしは月の君の命令を受けたつもりはない。 あたしは、エリスの自由意志で彼女を帝都へ連れて帰りたかった。 皇后の地位へ押し上げたかった。 エリスを説得できずにあたしが時間を引き延ばした分、月の