「地震や津波、原発事故があっても日本人が落ち着いていたことに感心しました。日本人が好きです。日本人として死にたい」 そう言って、日本人になった日本文学の研究者、ドナルド・キーンさんには伝えたいことがありました。生涯にわたって日本を愛したキーンさんの秘めたメッセージです。 (科学文化部記者 籔内潤也) 2019年3月29日、記者の私はアメリカ ニューヨークにあるコロンビア大学の図書館にいました。そのとき、ドナルド・キーンさんが亡くなってから1か月余り、キーンさんが16歳で入学して以降、4分の3世紀にわたって関わり続けた場所で、キーンさんゆかりの日本文学の翻訳賞の受賞式が開かれていたのです。