彼が期待してるのはどうやらふつうに、当たり前に、自分が愛されているという実感だ。浅倉くんよりも、自分が選ばれているという確かな事実だ。だとしたら、私は自分の身を守るためにも、泣いて許しを請うべきだろう。どうして電話してくれなかったのと恨んで、頭をさげるべきだろう。 でも、そうしたら、今度は浅倉くんになんて言えばいいかわらない。 「そうね。そう言われたほうがミズキさんとしては納得するかもしれないけど、そういうんじゃなかったと思う」 「思うって……」 一瞬、怒りかけた気配を押しとどめ、彼は椅子の背に左手をついて腰をかがめてこちらを見た。私はその視線を跳ね返すつもりで相手を見つめた。 「ミズキさんが、私といても幸せそうじゃなかったからよ」 彼は大きく目を見開いた。 それから、声をあげて笑った。 「すごいね、姫香ちゃん。さすがに僕もぜんぜん予想してない言い訳だ。すごい」 言い訳したつもりはなかった
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