ナチス高官の暗殺計画を語る、ポストモダンの「歴史小説」 ローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』 越川芳明 ナチス高官ハイドリヒの暗殺計画をめぐって、ポストモダンの語りの趣向を施した「歴史小説」だ。 ポストモダンの語りというわけは、語り手が自身の語りに対して自意識過剰とも言える言及(寄り道)を行なうからだ。それは、物語の進行をとめて、すでに山ほどもある関連文献(ラングやサークの映画や、クンデラやフローベールなどの文学)に対する語り手自身の評価を差し挟む行為にもつながる。「歴史事件」や「歴史的な人物」を扱う場合、「事実」を積み重ねながら、「捏造」に注意を払わねばならないのだ。だが、小説とは、ある意味「捏造」そのものではないのか。 一風変わったタイトル「HHhH」は、「ヒムラーの頭脳は、ハイドリヒと呼ばれる」という文章をなす、それぞれの単語の頭文字を並べたものだ。 語りの前半では、「ヒ
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