世界文学の光源、シュルツの研究史 ――ポーランド文学の翻訳と交流の記録 評者:高取繁(評論家) 二〇世紀ポーランドを代表する世界的作家ブルーノ・シュルツについては、もはや多言を要しないだろう。ポーランド出身のイディッシュ語作家アイザック・バシェヴィス・シンガーは、「シュルツはときにカフカのよう、ときにプルーストのように書きましたが、しばしばそのどちらも到達できなかったような深みに辿り着くことに成功しました」「シュルツはまた不条理の名手です」と述べた。故郷である東方ユダヤ人の集住地域ガリツィアのドロホビチ(現在はウクライナ領)で、シュルツは一九二〇年代から画家として活動をはじめ、三〇年代に二冊の短編集『肉桂色の店』『砂時計の下のサナトリウム』を刊行した。ポーランドが独ソに分割占領され、独ソ戦へと続く時代のなか、四二年にナチスの将校に射殺された。一時は忘却の淵に沈んだ作家は、二〇世紀後半に世界