すべての点からすべての点へと直線を引くこと 紀元前300年頃にユークリッドによって編まれたとされる『原論』の、これが最初の「要請(αιτήματα)」である。この前に「直線」とは「その上の諸点に対して等しく置かれた線」であること、「線」とは「幅のない長さ」であり「点」とは「部分のないもの」であることが定義として明記されている。 ペンを片手にまっさらな紙と向き合い、起点と終点を心に決めて、ユークリッドの意味での「直線」を試しに引こうとしてみる。意図に反してペン先は振れ、目指していたはずの終点を見失う。線は「その上の諸点に対して等しく置かれ」るどころか、ふらつき、波打ち、そこかしこに幅の濃淡が生まれる。思うようには描けない。 くり返し試す。そのたびに新たな、姿の違う、一つ限りの線が生まれる。筋肉と意志の微妙な統御、ペン先の向き、紙のテクスチャ。その場に生成する諸条件が絡み合い、直線を目指した運