爆発の音がする。グラスを手に空の光を振りかえって、華やかな戦争みたいだ、と彼女は言う。夜になったばかりの空が赤く光り、緑色がかり、うす青く陰る。部屋の灯りは落とされ、やや過密にそこにいる私たちはたしかに、逃げて隠れているようだった。私は少しだけ動揺して言う。その種の比喩を、私は臆病に避けているんだよね。不謹慎だ、みたいに叱られるから。ほんとうに爆撃を受けている人に申し訳ないと思わないのか、とか。「当事者の身にもなってみろ」と弾劾される事態を避けている。 片方の眉を上げて彼女は笑う。年に一度の大きい花火大会の晩で、彼女の一家が住むマンションのベランダからは、やや遠景にはなるけれども、それを見ることができる。けれどもベランダは幾人もが座れる広さではなく、外気は日が暮れても有害なまでの熱を有して、だから火花に飽いた者は順繰りにリビングに入って、よく働く空調が吐き出す空気と控えめな灯りのなか、水滴