◆自然科学部門 三橋淳さん『昆虫食文化事典』(八坂書房・5040円) ◇昆虫を人口増時代の食料に 「これまで日本語で昆虫食についてとりまとめた書籍は、一冊もありませんでした。これができるのは私くらいだろうと自負し、生きているうちに完成させたかったのです」 そもそもの専門は昆虫の細胞培養。昆虫「食」は第二のライフワークである。『世界の食用昆虫』(1984年)の執筆依頼を機に資料の収集を始め、退職後、整理に着手。その成果として『世界昆虫食大全』を刊行し、収まりきらなかった分を本書で紹介した。 虫を食べることに関する、あらゆる一次資料を網羅しているのが特徴。世界各地でどんな昆虫が食べられているかはもちろん、飢饉(ききん)に際しての「救荒食」の観点、さらには文芸や映画に登場する昆虫食まで扱い、その膨大な量に圧倒される。 「関係する記事は、さまざまな分野にわたり、多様な印刷物に登場します。その情報を