ジャック・ケルアックが1957年に発表した”On the Road”が、河出書房新社の世界新文学双書の1冊として、『路上』(福田実訳)のタイトルで出版されたのは1959年のことである。その後何度か姿を変えて出版され、河出文庫に入ったのは1983年だ。 この小説が、池澤夏樹の個人編集による世界文学全集の1冊として、青山南の翻訳で出版されたのは、2007年のことだ。その時に、タイトルが『オン・ザ・ロード』と変わっている。その理由らしきことが、訳者当人が、その本の「解説」ページで次のように書いている。 <ジャック・ケルアックでまずなによりすごいと思わされるのは、その鋭い語感である。たとえば、『オン・ザ・ロード』(On the Road)というタイトルひとつとっても、じつにありふれた日常の言葉だが、よくぞ選んだと感心させられる。まず浮かぶのは、長いこと邦題にもなっていた「路上」という日本語だが、本