トム・ハンクスはどうも苦手な俳優なのだけれど、これはよかった。 感心した点を3つほど。 冒頭、リチャード・フィリップス(トム・ハンクス)が妻を伴い家を出るのだが、その車の発進をあろうことかポール・グリーングラスは、無人のはずの家の中からガラス窓越しにとらえる。ほんの短いカットでしかないのだけれど、そこに確かな演出を垣間みることができる。予兆としてのカット。いつもと変わらないはずの出発が、不吉な距離感を隔ててとらえられる。二度と戻って来れないかのような...はたしてどれだけの監督がここでこのような視点に入ることができるだろうか。 2つ目は、他の2つに比べると感心の度合いはさほどでもないのだけれど、海賊側に足を怪我した若者を配している点。フィリップスに同情的でありながら、何もできないキャラクターである彼は、我々観客の似姿であり、観客を映画内に係留するアンカーとしてある。その場にいるような臨場感