あと数か月で2010年代も終わろうとしている。次の10年はどんな時代になるのだろうか。最近は嫌なニュースばかり続いて、お先真っ暗な予感しかしない。でも、もっと暗い気持ちにさせられるのは、そういう危機感を共有できそうな音楽がなかなか見当たらないことだ。 「いまの日本、メチャクチャ問題あるじゃないですか。チルってる場合じゃないんだけど、それを音楽で示すのがタブーみたいになってる」 そう語るのは、本稿の主人公である99年生まれのシンガー・ソングライター、ヤナセジロウ。彼の率いるプロジェクト、betcover!!のメジャー・デビュー作『中学生』は、例えばビリー・アイリッシュがそうであるように、何もかもをひっくり返してしまいそうなポテンシャルを秘めている。 ダブ、パンク、フォーク、ソウルを呑み込んだ音像は、90年代のベックも彷彿とさせるミクスチャー感覚と、若い耳ならではの遊び心を兼ね備えたもの。突き