ここまで、ミステリの類型分類について、日本の例と英米の例を見てきた。英米以外では、こうした分類例を見つけることはできなかった。(単にぼくが、その他の国のミステリ事情に疎いだけであろうが) さて、こうしてそれぞれの類型分類の中身を比較すると、すべての分類例で項目立てされているのは、「警察小説(Police Procedural)」と「サスペンス(心理サスペンス/ロマンティック・サスペンス)」の二つであり、多少名前が変わるものの、多くの分類例で見られるのが「ハードボイルド(私立探偵小説)」である。この三つの枠組は、分類例ごとに含められる作品が多少異なってはいるものの、どの類型分類でも例外なく設けられている。それだけ、類型として認識しやすいということなのだろう。 これらの類型の区分視点は何だろうか。「ハードボイルド」はもともと、主人公の性格、または文体による枠組であった。ハードボイルド(感情に流