あ゛……。 巨人・矢野謙次の放った打球がレフトへ高々と上がった瞬間、最後まで声を張り上げていたレフトビジター周辺の空気は、一年前とまったく同じように凍りついた。 10月7日東京ドーム最終戦は、長野久義の代打逆転サヨナラ満塁ホームランで終戦した去年に続き、2年連続サヨナラホームランでの幕切れとなった。しかも今年は、東京ドーム主催試合0勝という前代未聞のおまけ付き。 止まった時間の中で、巨人ファンが勝利の凱歌を挙げながら、オレンジのタオルを振りかざす。それらは、ベイファンから漏れる一斉のため息で、はたはたはたはた、たなびいていく。その光景は、まぎれもない、地獄。 試合自体は悪い試合じゃなかった。9回までは先発の加賀美希昇が熱投、マウンドに来ようとするデニーコーチ(友利結)を逆に睨み返すような気合で再三のピンチを乗り切ると、9回表には無死一塁で筒香嘉智に送りバントをさせて勝利への執念も見せる。だ