べっとりと貼りつくような声に受話器を遠ざける。思わず顔をしかめて、胸が悪くなるような嫌悪感を自覚した。どうしてこんなに強い嫌悪感があるのか、電話対応をしながら自分の中を探った。不愉快で強い感情はしっかりとモニタリングしたほうがいいと私は考えている。打ち消すのではなくて、見ないふりをするのではなくて。 部下が急病で入院したということで、同居している母親から電話がかかってきた。社員の病欠時、家族から会社に電話してもらうのはいっこうにかまわない。まったく問題ない。でも詳細な病状を教えてもらう必要はない。倒れる前のようすから現在の症状の詳細まで身体の具体的な描写を織り交ぜて話す必要はない。それは部下本人のプライバシーであって、親御さんが勝手に私に話していいことじゃない。そう思う。 私は通常の電話ではしない強引なタイミングで話に割り込み、詳細を話す必要はないこと、社内で必要な連絡はしておくことを伝え