「クマくん」若い女性司書教諭はそう声を掛けると直ぐに「あなたに悪いニュースがあります」と、まるで外国映画の台詞を直訳したような表現で続けた。しかし、それを聞いたクマは別に嫌な気はせず、それどころか随分洒落た言い方をするな、とさえ思った。 「言わなくても解ると思うけど、君をこのまま図書室に置いておく訳にはいきません」 その言葉にクマは如何にも心外という表情を浮かべて、殊更大袈裟に両手を広げ、ゆっくりと首を横に振る。それこそまるで外国の映画俳優がそうするみたいに。 「私は伝えるべき事は伝えました、本件に関し君に拒否権はありません。直ちに3年1組の教室に戻り、現国の授業を受けて下さい」 『この芝居がかった言葉使いは、多分誰かが作ったルールなのだ。だからこの世界では誰もがそのルールを守らなければならない、与えられた台本に役者が従うように』 「オーケー、ボス・・・」 そう答えたところでクマは目が覚め