普段は一介の中学3年生。それがプロ入り半年余りも勝ちっ放しで、ついに棋界の歴代最多連勝記録を塗り替えてしまった。7月の対局に敗れ記録はストップしたものの、なぜプロ棋士が束になっても勝てなかったのか。中学生にひねられた彼らの心のうちは。藤井聡太四段に挑み、敗れた14人の、我、「天才」にかく敗北せり。 *** この6月26日朝も、藤井四段の前には、カメラが長蛇の列をなした。 東京・千駄ヶ谷の将棋会館で行われた増田康宏四段(19)との対局。10時に始まった勝負は、藤井四段が中盤までの劣勢をはね返し、夜までもつれる。 「負けました」 21時24分、増田四段が頭を下げた。瞬間、カメラが対局室になだれ込み、一斉にフラッシュがたかれた。これで藤井四段は、公式戦29連勝。歴代単独最多記録を達成したのである。 もちろん、藤井四段は、史上最年少の14歳2カ月でプロになった棋士。強いのはわかっていた