映画「福田村事件」が現在公開中で、注目を集めている。しかし、被害に遭った人々の地元が困惑していることは、あまり知られていない。被差別部落出身という行商たちのルーツがクローズアップされ、地域が特定可能な映像がテレビニュースで流れるなど、差別の二次被害ともいえる状況が生まれている。 「そっとしておいてほしい」と願う住民がいる一方で、「ひどいやり方で殺された先祖を、きちんと弔ってやりたい」との声もある。いまだに理不尽な部落差別が残る今、地域は葛藤の真っただ中にある。 事件から100年の9月6日、千葉県野田市で犠牲者追悼行事があり、香川からも遺族が向かった。初めて因縁の地を訪れた男性は、何を思ったのか。(共同通信=牧野直翔) ▽事件のあらまし 福田村事件は関東大震災から5日後の1923年9月6日に起きた。襲った自警団は福田村と田中村(現・柏市)の人々。震災直後に広まっていた「朝鮮人が井戸に毒を入れ