「なぁ、聞いてくれる?」 ある友人が電話口でこんなことをぼやいていた。 遠縁の親戚が亡くなったという知らせがあった。名前を告げられても、顔が浮かばない。その程度の身内だという。身体に軽度の障害があり、50代独身、生活保護を支給されて公団アパートでひとり暮らしをしていた。 さびしい人生のようだが、部屋を整理してみると、几帳面なのだろう、輪ゴムでとめた競輪のハズレ車券がひきだしにしまってあり、女性と並んで指をワイの字に立てた写真がでてきた。 サイン色紙や、女性の写ったCDが何枚もあったことなどから、追っかけをしていた様子。さらに、残高400万円あまりの預金通帳も出てきた。 立会いの市の職員に、「これ、どうしましょう?」と通帳を見せると、「あの、わたし、今月いっぱいで異動なんです。見なかったことにしておいてください」。 職員さんは、大画面のテレビを見たときから、まいったなぁという顔をしていたそう