今回は,CMOS技術で1チップ上に集積可能な2種類の周波数変換技術を取り上げる。一つは,イメージ妨害波を抑圧するミキサの構成と,その基となる複素信号についての考え方。もう一つは,微細化技術の進展で利用可能になった最先端のサンプリング技術である。 (野澤 哲生=日経エレクトロニクス) 前回はRF回路に特有の信号処理である周波数変換と変復調の基礎について解説し, RF回路の不完全性や雑音が変調信号に及ぼす影響について考察した。今回は,RFトランシーバのアーキテクチャの解説(次回に予定)につなげるために,周波数変換についてさらに掘り下げる。具体的には,イメージ抑圧回路のICチップ上への集積を可能とする「イメージ抑圧型ミキサ」と,最近登場してきた周波数変換技術である「サンプリング型ミキサ」の基礎を解説する。 複素信号で処理し,イメージだけを消す まず,イメージ抑圧ミキサの基本原理を説明する。イメー