番号が振られた無機質なバスの中に、白い服を着た男たちが押し込められている。箱のような建物の中に入り、着ていた服を脱ぎ棄て更に頑丈な防護服をまとう。 簡単な健康チェックの後、今日の作業が始まる。 ゆっくりと、緩慢に。 死にかけの老人のような速度で、俺たちは巨大な鉄の箱を解体していく。 ここは福島第一原発。死の棺のど真ん中だ。 西新宿駅前の鳥貴族が潰れ、バイト先が無くなった時にたまたま見かけたのが原発作業員募集のチラシだった。 住み込みで福島へ。 同棲していた女との関係も煮詰まってきた所だったから丁度よかった。 見たこともない光景に最初はSF映画みたいだとワクワクしていたけれど、ひと月過ぎた今は何もかもが退屈だ。 重たい服を着ていると死にかけの年寄りのようにしか動けない。熱中症予防のためか、休憩時間はやたら多いけれどそれが余計にかったるい。 時を経て錆びついた構内と、ゲートの向こうに新しく作ら