初期の心臓移植について、医療側のみならず患者や提供者も含めて、その展開を描く。全編を通じて緊迫感に満ち、読み応えのある作品だ。 昭和42年12月、南アフリカ共和国で世界初の人から人への心臓移植手術が行われた。そのニュースは世界を駆け巡り、それを契機として、世界各地で次々に心臓移植手術が実施された。しかしながら、そのいずれのケースでも、移植を受けた患者が長く生きることはなく、無謀な人体実験だという批判も高まる。日本では、昭和43年8月に札幌医大で和田教授が心臓移植を行った(世界で30例目)が、移植を受けた若い患者は死亡し医学界からは批判が相次いだ。 心臓移植をめざして多くの研究者が犬を使って実験を重ね、人工心臓や薬の開発も進められていく。そうした積み重ねの結果、ついに心臓移植手術に踏み切る医師が現れるのだが、作者は、移植を受けた患者や心臓を提供する人、その家族にも焦点を当てる。医学の進歩には
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