日本医学哲学・倫理学会でワークショップ「中絶のなにが問題なのか」を企画し、僭越ながら司会をさせていただきました。報告をお願いした3人の先生方は、倫理、医学、法のご専門からそれぞれに全く異なる「中絶」へのアプローチを提示してくださいました。立場の違いから見えているものが全く違うことが明白になったばかりか、この問題を考える際に、学際的な研究が不可欠だということもまた明らかになったと思います。 ご報告者の1番手は、京都女子大学の江口聡先生。胎児と女性の二項対立を解くための従来の議論を簡単に紹介して、「バチカンも説得できる」ような胎児の位置づけを模索しているとのことでしたが、「法的には解決しえても、倫理的には解決できない」という結論に落ち着いてしまいます。しかし、それは「受精から一環として胎児」という定義を前提にしているためであり、その定義が誰のものであるのか、その定義を採用すること自体にすでにバ