何故、星野源がこれほど人気を博しているのか。それは誰もが一度は思いつく疑問かも知れない。もちろん彼は優れたアーティストだ。役者としての活動も目覚ましい。文筆家としても知られている。しかし、彼がいわゆる大衆受けするアーティストか、と問われれば、答えは必ずしもすぐには出てこない。 何故なら、彼が表現するものは時として難解であるからだ。もっとも、彼はいわゆる「鬼才」といったタイプではないかもしれないし、奇を衒って支離滅裂な表現をしているわけでもない。彼の作る作品には、いつも、ストレートではっきりとしたメッセージが込められている。とはいえ、それは万人受けを期待できるほど分かりやすくはない。 そうした星野の難解さは、彼が書く楽曲において克明に現れる。たとえば、2016年に社会現象にまでなった「恋」もそうだ。誰にでも覚えられる印象的な曲調なのに、その詞をよく読んでみると、不可解であったり難解であったり