歯のある膣(Vagina Dentata) 性に対する男性の恐怖の古典的なシンボルで、性交の際に、女性が性交の相手を呑みこんだり、去勢したりするかもしれないという無意識的な確信を表す。フロイトは、「女性の性器を見て、去勢の脅威を感じて恐怖の衝撃を受けないですむ男性はおそらくいないだろう」と述べた[1]。しかしフロイトは間違っている。この「恐怖の衝動」の真の原因は、神話や空想では今や普遍的に認められている「口のシンボル」にある。「精神医学においては男性と女性の両方が、女性の膣への入り口を、口として想像することがよく知られている[2]。 社会が父権制社会であればあるほど、この恐怖は空想によって、よりかき立てられるように思われる。母権制社会を崩壊させたとき、クレマラ島〔ニューヘブリディーズ諸島にある島〕の男たちは、「『それ』にわれわれを食い尽くさせようとしている『それ』の方にわれわれを引っ張って