監督のポン・ジュノは『グエムル -漢江の怪物-』や『スノーピアサー』といったヒット作を手がける、現代の韓国映画を代表する人物。その作風の特徴は「居心地の悪さ」である。 ポン・ジュノの映画は、その構造でもって見る者の常識や価値観をひっくり返しにかかる。陰惨な未解決事件の捜査では刑事たちが何度も失敗し、すっきりと解決しない。もし巨大な怪物が、なんの準備もできていない人々の前に現れたらどうなるかを可能な限りリアルに描写する。「こういう映画ならこういう展開になるだろう」というこちらの予想をひっくり返すのが本当にうまく、しかも見ている側の欺瞞や油断を突くので観客にとっては居心地が悪い。でも、面白いから見てしまう。 「食べられるトトロ」が暴く、食肉と人間の関係 『オクジャ』の物語は2007年から始まる。世界的な畜産企業であるミランド社は遺伝子組換えによって生み出された巨大で味のいい豚である「スーパーピ