鷲田康=文 text by Yasushi Washida 何が勝利の基準なのか……。 「たとえ10打数10三振でもチームが優勝すればそれでいい」 ボストン・レッドソックス入りした松坂大輔投手との勝負について聞かれた答えだった。いかにも松井らしい。決してウソではない。間違いなく松井のプレーヤーとしてのアイデンティティーは、この言葉の中に集約されている。星稜高校から巨人、ヤンキースと球界の王道を歩いてきた男を支え続けたのは、ある種、強迫観念にも似たチームの勝利への強い意識だった。チーム勝利至上主義とでもいえる「勝つこと」へのこだわり。高校野球では県予選を勝ち抜き、甲子園で頂点に立つことだった。巨人時代にはペナントレースを制し日本一を目指すことだった。そしてメジャーの世界に足を踏み入れても、この4年間は、ひたすら「ワールド・チャンピオン」という目標に向かってグラウンドに立ってきた
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