要旨 理化学研究所(理研)脳科学総合センター親和性社会行動研究チームの黒田公美チームリーダー、恒岡洋右研究員(研究当時)、時田賢一研究員らの研究チーム※は、オスマウスの子育て(養育行動[1])意欲が「cMPOA」と「BSTrh」の2つの脳部位の活性化状態から推定できることを発見しました。 ほ乳類の子は未発達な状態で生まれ栄養源を母乳に頼るため、親による養育が不可欠です。メスマウスは若い時から子の世話をすることが多く、さらに母親になる時には出産時の生理的変化[2]により養育行動が強化されます。一方、交尾未経験のオスマウスは養育せず、子に対して攻撃的ですが、メスとの交尾・同居を経て父親となると、よく養育するようになります(父性の目覚め)。黒田チームリーダーらは2013年に、フェロモンを検出する鋤鼻器(じょびき)[3]の阻害がオスマウスの子への攻撃を抑え、養育を促すことを見いだしています注1)。