流行語に見る今の世相『日本語学』２００２年１１月号掲載 流行語に見る今の世相 小矢野哲夫 一 流行語と世相 世相というものは、どんな形容を受けるものなのだろう。「明るい」「暗い」「混乱した」「不況下の」「好景気にわく」など。長期化することもあれば短期間に終わることもあるのが世相であろう。 新語は新しい事物の出現に伴って、あるいは既存の事態に概念が与えられて登場する。これがその時の世相を象徴するばあいもあるだろう。しかし、流行語のほうが世相と密接にかかわっている。というのは、長短の差はあるものの、一定期間、人の口に上り、マスコミで使われるということで、人々の関心が集中する対象になっているということを示しているからである。新語が流行語になるということも、もちろんある。 流行語には、「流行」の語が表しているように、終わりがある。流行が終わると、世相も変わっていると考えることができる。世相は、長い時間を単位として巨視
