text 情報自由論第1回 情報化とセキュリティ化が交差するところ 著者:東浩紀 初出:『中央公論』2002年7月号、中央公論新社 この連載は、「情報化」された社会の現状と照らし合わせ、個人の「自由」の位置を考えることを主題としている。とはいえ、そんな巨大で複雑な問いにそう簡単に答えが見つかるはずもない。そもそも研究者としても評論家としても駆け出しの筆者には、「自由」とはいかにも荷が重い言葉である。したがってこの小論では、情報化と自由の関係を分析するために必要な前提に届くか届かないか、その入口あたりまで行ければ僥倖だと考えている。はじめにそのことを断っておきたい。 にもかかわらずこの小論を書こうと決意したのは、現実の政治的かつ社会的な変化が、筆者のほうの準備を待ってくれそうにないと判断したからである。一九九〇年代の情報技術革命を通り抜けた私たちは、いま、今後数十年の社会が辿る大まかな道すじ