エントロピー増大の法則に逆らって、 偶然、局所的に小さな秩序を作ることがありうる。 これを「ゆらぎ」と呼ぶ。 プリゴジン以前の科学では、 この「ゆらぎ」という小さな秩序、小さな偶然は 無視されてきた。 「はぁ?全体のなかの一部が、ちょっと秩序を作ったからといって、 何が起こるんだよ?そんなのすぐに壊れるだろう?」 それは、そうだ。 実際に、確率論で考えたって、そんな小さな偶然は、 すぐに巨大な全体の中に、かき消えてしまう。 だが。 事実は違ったのである。 たしかに、その小さな秩序は、無視できるような小さな影響しか持たないが、 それでも、自分の周りの粒子たちに、少しだけ影響を及ぼす。 そして、その小さな影響は、その隣りの粒子に影響を与え、 さらに、そのまた隣りの粒子に影響を与え……と、 次々と連鎖的に影響が伝わっていく。 これにより、その秩序を中心とした、 ちょっとした小さな渦巻きを生むこと