◆畑谷史代 『シベリア抑留とは何だったのか ―詩人・石原吉郎のみちのり― 』 (岩波ジュニア新書) 2009-03 人間の生死にかかわることについて、軽々に論ずるのはつつしむべきとは思うが、人は何故、それほど生にしがみつこうとするのか。 私は子をもうけてはいない。したがって、移植医療以外では生存はおぼつかないと診断された、重い病気の子を持つ両親の心中を察することはむずかしい。 医療テクノロジーの飛躍的な発達によって、かつてならば確実に死に至るはずの病が、莫大な費用と手間ひまをかけさえすれば、そうではなくなりつつある。これは人類にとってほんとうに進歩といえるのか。だれもが手放しで喜ぶべき事態なのか。 血液、骨髄液、臍帯血、あるいは、親族間による生体肝、腎移植等の、必ずしもドナーの死を前提としない移植医療ならまだしも、それが、心臓をはじめとする根幹部位であれば、患者にとってドナーを待つというこ