「そこで2万6000種類の化合物をランダムに選んでインフルエンザウイルスに効くか、一つひとつ手作業で試していったのです。シャーレに細胞を入れ、そこにインフルエンザウイルスを入れます。その中に化合物を入れ、細胞が生き残るかどうかを調べるという単純な実験方法です。 週に600種類ずつ試し、2万回以上の失敗を経た後に偶然、ウイルスに効果のある化合物、現在のアビガンにつながる『T-705』を発見したんです。'98年のことでした」(泉) 無念の開発中止 富山化学工業は発見したT-705を本格的に試験するため、富山大学医学部の白木公康教授(ウイルス学)に共同研究を持ちかけた。白木教授が語る。 「富山化学は昔から化合物を合成する技術には定評がありました。実際、T-705の構造図を見たときに、これは薬になると直感し、共同研究を承諾したんです。大学ではインフルエンザに感染させたマウスを使って、生体実験を行い