かつて、平安京の内裏にある紫宸殿正面の階段から見て右には橘の樹、左には桜の樹があった。 この二本の木は、一般に、右近の橘、左近の桜と対比されたという。 桜はどこか死の匂いがする樹木であるが、一方の橘は、その葉が寒暖の別なく常に生い茂っていることから生命力や長寿の象徴とされた。 戦前、昭和天皇が、「桜が花も葉も散ることから潔く散る武人の象徴となってきたのに対し、常緑樹の橘はいつ見ても変わらないことから永遠を表すのものであり、永遠であるべき文化の勲章としては橘の方が望ましいのではないか」、という趣旨の意見を出し文化勲章のデザインが桜から橘に代わったという逸話がある。 橘紋の分布は全国では9位。桜紋よりも圧倒的に浸透している。 元々、橘という植物は柑橘類で、紀伊半島、四国、九州の海岸に近い山地に自生しているが、橘紋も和歌山県、高知県で3位、奈良県、広島県、宮崎県で4位とやはり橘が自生している地域