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ブックマーク / honz.jp (72)

  • 『土偶を読むを読む』縄文研究の最前線を伝える、肝の据わったまたとない反論本 - HONZ

    作者: 望月 昭秀,小久保拓也,山田 康弘,佐々木 由香,山科 哲,白鳥兄弟,松井 実,金子 昭彦,吉田 泰幸,菅 豊 出版社: 文学通信 発売日: 2023/4/28 今やあまりお目にかかれない書籍が出た。書は、2021年4月に出版された竹倉史人『土偶を読む』(晶文社)への反論である。それも、明確な事実と論拠に基づいて真っ向からメッタ斬りにする、恐ろしく肝の据わった一冊だ。 まず、当時の『土偶を読む』現象をおさらいしよう。同書は刊行直後からNHKを中心とする各メディアで注目を集め、SNSでも紹介記事や書評が大きくバズり、脚光を浴びた。人類学者が独自の見識から打ち立てた「土偶の正体は縄文人の用植物」説をイコノロジー(図像解釈学)で次々に解き明かしていくその内容は劇的かつ鮮やかで、養老孟司氏を始めとする著名人らの好評も後押しし、半年で六刷のベストセラーとなる。 極めつきは第43回サント

    『土偶を読むを読む』縄文研究の最前線を伝える、肝の据わったまたとない反論本 - HONZ
  • 悪役になったのはここ最近『脂肪の歴史』 - HONZ

    原書房の“「」の図書館”シリーズからの1冊である。豚肉、サンドイッチ、ビール、砂糖など、今までべ物や飲み物、調味料の歴史を取り上げてきたこのシリーズの流れからすると「脂肪」というのは少し浮いているような気もする。とはいえあくまで「」の図書館ということで、脂肪といってもぜい肉の方ではなく、バターやマーガリンといった用脂肪の歴史を辿っていく。 脂肪というとすっかり悪役のイメージだが、3大栄養素のひとつにも数えられるように、カラダにとってなくてはならない存在でもある。タンパク質や炭水化物よりも1キログラムあたりのカロリーが豊富でエネルギー密度が高いため、多くの狩猟採取社会で重要な役割を果たしている。ほとんどの伝統的な生活において脂肪は全カロリーのうち40%前後を占め、さらには伝統的なマサイ族の生活ではその割合が約66%、イヌイットにおいては約70%に上るとも言われているそうだ。 動物性

    悪役になったのはここ最近『脂肪の歴史』 - HONZ
    gogatsu26
    gogatsu26 2021/03/21
    “何が体に良いのか、または悪いのか、とにかく人は健康に関してはっきりした答えを欲しがる”
  • 『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ

    同性愛の「治療」を受ける男。娼婦を相手に性的興奮を得ることができれば成功だ。男の頭には電極が差し込まれており、後頭部から4のコードが隣の部屋まで延びている。その部屋では、研究者たちが電極から送られてくる計測値を見ながら、男の快楽中枢に適切な電気刺激を与える。 まるでSFだ。しかし、未来の話としてはおかしいと思われないだろうか。現在の状況を考えると、LGBTが治療対象となる未来などやってくるはずがなかろう。未来物語でもなければ架空のストーリーでもない。米国で実際におこなわれた人体実験なのである。 書『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』の冒頭シーンがこれだ。いったいどんな内容のなのか。意識せずとも期待感が広がっていく。まるで脳のどこかに電気刺激が与えられたかのように。 この実験をおこなったのは、精神科医ロバート・ガルブレイス・ヒース。統合失調症病などさまざまな精神疾患に対して、患者

    『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ
    gogatsu26
    gogatsu26 2020/10/14
    「経皮的な刺激で快楽ならすでに」「いや、そういう話じゃないんだ」
  • 『人新世の「資本論」』未来を構想する新しい思想の誕生! - HONZ

    この興奮が醒めないうちに書いておきたい。凄いを読んだ。 マルクスを現代にアップデートさせた研究で世界的な注目を集める俊英・斎藤幸平の『人新世の「資論」』である。 新書の世界には何年かに一度、画期的なが現れる。 物事の見方に新しい方向から光を当てたり、これまでにないアイデアを提示したりして、読者の世界の見え方を一変させてしまうようなだ。ここでは細かく挙げないが、好きであれば何冊も書名が思い浮かぶだろう。そうしたは、時に時代の空気をとらえたベストセラーとなり、あるいは長きにわたって読み継がれる名著となる。 書もそうした系譜に連なる一冊だ。今後、「新書大賞」や「紀伊国屋じんぶん大賞」などでは、間違いなく上位にランクインするだろう。のっけから「大風呂敷を広げている」と思われるだろうか?だが、書の内容を知れば、誰もが納得せざるを得ない。このにはそれほど重要なことが書かれている。 近

    『人新世の「資本論」』未来を構想する新しい思想の誕生! - HONZ
    gogatsu26
    gogatsu26 2020/09/23
    辻仁成のオールナイトニッポンみたいなタイトルにゅ
  • 『ワイルドサイトをほっつき歩け』愛すべきおっさんたちの愚かで優しい日々 - HONZ

    世界が激動・混迷するこの時代、「おっさん」たちは何かと悪役にされていた。 トランプ大統領が誕生したのはおっさんのせいで、EU離脱もおっさんのせい。(中略)セクハラもパワハラもおっさんのせいだし、政治腐敗や既得権益が蔓延るのもおっさんたちのせい。 どこの国でもそうなのか、諸悪の根源のように言われている巷のおっさんは当にそんなにひどいのか。 中学生の息子の見た世界、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が大ヒットしたイギリス在住の物書き、ブレイディみかこさんが今回ターゲットにしたのは、彼女の身のまわりに生息する「おっさん」たちだ。(一部人も含めたおばさんも) 彼女が観察するのは『ハマータウンの野郎どもー学校への反抗・労働への順応』で紹介された1977年出版当時の、英国労働者階級のガキどもの成れの果てだ。そのころ18歳とすると、いまや60歳オーバー。反抗的で反権威的なくせに、既存の階

    『ワイルドサイトをほっつき歩け』愛すべきおっさんたちの愚かで優しい日々 - HONZ
    gogatsu26
    gogatsu26 2020/06/03
    “トランプ大統領が誕生したのはおっさんのせいで、EU離脱もおっさんのせい。(中略)セクハラもパワハラもおっさんのせいだし、政治腐敗や既得権益が蔓延るのもおっさんたちのせい。”
  • 『ステレオタイプの科学』 色眼鏡で見られると本当にできなくなってしまう - HONZ

    「女性は数字に弱い」「高齢者は記憶力がわるい」「日人はアフリカ系の人に比べて身体能力で劣っている」。わたしたちはしばしば過度の一般化を行い、特定のステレオタイプをとおして周囲の人を眺めてしまう。そして、そうしたステレオタイプがときとして深刻な偏見や差別を生み出してしまうことは、多くの人が知っているとおりである。 だが、ステレオタイプがもたらす悪影響はどうやらそれだけではないようだ。なんと、否定的なステレオタイプをとおして眺められると、眺められたその人は、学業やスポーツ、仕事などで実際にパフォーマンスが落ちてしまうというのだ。 書は、アメリカの著名な社会心理学者クロード・スティールによるものである。スティールを有名にした研究のひとつが、「ステレオタイプ脅威(stereotype threat)」に関するものである。そして、そのステレオタイプ脅威こそが、先に述べたパフォーマンスの低下を引き

    『ステレオタイプの科学』 色眼鏡で見られると本当にできなくなってしまう - HONZ
  • 弱い心を何度も叱り、金かりに行く『文豪と借金』 - HONZ

    文豪と借金というのは切っても切り離せないものなのかもしれない。石川啄木、内田百閒、川端康成など、借金にまつわるエピソードを持つ文豪は枚挙に遑がない。なかでも有名でゲスの極みといっても差し支えないのは石川啄木である。 親友の金田一京助をはじめ、借金に借金を重ねたあげく、金は返さずに踏み倒し、子に金をやらずに、手にした金で女遊びに明け暮れていた。書にはそんな石川啄木の借金メモが掲載されている。メモをみると60名あまりから1372円を借金していることがわかる。いまのお金にして680万ほどだという。石川啄木は借金に関してこんな句を残している。 何故かうかとなさけなくなり、 弱い心を何度も叱り、 金かりに行く 金を借りに行く際に自分を情けなく思う気持ちが何となく思い浮かぶ歌だ。一方で啄木は「一度でも我に頭を下げさせし人みな死ねといのりてしこと」なんて歌も残している。この歌は金を貸した人に対して読

    弱い心を何度も叱り、金かりに行く『文豪と借金』 - HONZ
  • 『クリーンミート』パンデミック防止の救世主!? - HONZ

    従来は、新テクノロジー糧問題という切り口で語られがちの「クリーンミート」だが、今後、コロナウイルス後の世界ではウイルスフリーの肉という切り口でも一躍注目を浴びそうだ。 生きている動物ではなく、生物の細胞を使って肉を生産する研究が進んでいます。この肉生産方法は「培養肉」と呼ばれる新技術で、10年後までには店舗で販売される見込みです。培養肉はまぎれもない動物の肉ですから、既存の植物由来のフェイクミートと混同しないようにしてください。昔ながらの肉と同じ味の培養肉の安全性が長期にわたる調査で確認され、手ごろな価格で販売されたとしたら、あなたは培養肉をべようと思いますか? 植物性たんぱく質由来の肉が最近流行りだしているが、更にその先のSFの世界を追求する人たちがいる。研究室で培養できるため「培養肉」と呼ばれたり、細菌や脂肪などの不純物が少ないことなどから「クリーンミート」と呼ばれたりするこ

    『クリーンミート』パンデミック防止の救世主!? - HONZ
  • 『2050年 世界人口大減少』と『人口で語る世界史』2050年以降の世界人口は減少に転じるのか? - HONZ

    経営学者で未来学者のピーター・ドラッカーは、1985年の著書『イノベーションと起業家精神』の中で、未来予測における人口動態(demography)の有用性について、「人口、年齢、雇用、教育、所得など人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。予測が容易である。リードタイムまで明らかである」と語っている。 昨年6月に発表された国連報告書『世界人口推計2019年版』によると、世界人口は現在の77億人から2050年には97億人へと、今後30年で20億人増加し、今世紀末頃に110億人でピークに達すると見られる。 その内訳を見ると、予測される人口増加の過半は、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ、エチオピア、タンザニア、インドネシア、エジプト、米国の9カ国で生じ、特にサハラ以南のアフリカの人口が倍増し、絶対数ではインドが2027年頃に中国を抜いて、世界で最も人口が多い国になると

    『2050年 世界人口大減少』と『人口で語る世界史』2050年以降の世界人口は減少に転じるのか? - HONZ
  • 『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』 - HONZ

    突拍子もない質問に科学で答える『ホワット・イフ?』、科学絵『ホワット・イズ・ディス?』(ともに早川書房刊)に続く、元NASAエンジニアの人気ウェブ漫画家、ランドール・マンローの新しい、『ハウ・トゥー』が登場した。『ハウ・トゥー』は、「川を渡る」、「ピアノを弾く」、「スマホを充電する」、など、一見日常的な課題を解決するために、あえて「とんでもない」方法を科学を使って探っていく。たとえば、川を渡る場合。「歩いて渡る」や「跳び越える」にはじまり、「川の表面を凍らせる」から、ついには「川を沸騰させて干上がらせる」に至る。そんなことは実際にはできません。書は、何かを最も効率的に行なう方法を教える実用書ではないのだ。 熱力学の第2法則を説明するのに、川を凍結する話をする必要はない。しかし、この法則のおかげで、川を凍結するには、川の流れほどのガソリンで製氷装置を稼働しなければならないとわかれば、仰

    『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』 - HONZ
  • 麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 - HONZ

    麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 歴史、特に最悪の医療の歴史などを読んでいると、あ〜現代に生まれてきてよかったなあと、身の回りに当たり前に存在する設備や技術に感謝することが多い。昔は治せなかった病気が今では治せるケースも多いし、瀉血やロボトミー手術など、痛みや苦しみを与えるだけで一切の効果のなかった治療も、科学的手法によって見分けることができるようになってきた。 だが、そうした幾つもの医療の進歩の中で最もありがたいもののひとつは、麻酔の存在ではないか。正直、麻酔のない世界には生まれたくない。切ったり潰したりするときに意識があるなんてゾッとする──現代の医療に麻酔は絶対絶対必須だ。そのわりに、患者に麻酔を施す麻酔科医の仕事は光が当たりづらい分野である。何しろ実際に手術や治療を担当することはめったにないから、麻

    麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 - HONZ
  • 『つけびの村』山口連続殺人事件の真相、噂は続くよ、どこまでも - HONZ

    山口連続殺人事件は、2013年に山口県周南市の小さな集落で起きた凄惨な事件である。住民わずか8世帯12人、半数以上が65歳以上という限界集落で、ある日突然5人の連続殺人と放火が起きた。 事件からほどなく犯人として名が挙がり、現場付近の林道で捕まった保見光成もまた、集落の住民の1人であった。 後にこの事件が大きな話題になっていった背景には、この村をめぐりさまざまな噂話がネットやマスコミで飛び交ったことがある。犯人の家に貼られていた「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という言葉が犯行予告だったのではないかというもの。犯人は村の人たちから村八分にあっていたのではないかというもの。 根も葉もない噂を立てられ、それを真に受けた無関係な人たちから一方的に攻撃される。どんどん騒ぎが大きくなっていき、さらに深刻な事態を引き起こす。書で描かれているのは、今では当たり前のように頻発する、ネット炎上の原風景とでも

    『つけびの村』山口連続殺人事件の真相、噂は続くよ、どこまでも - HONZ
  • 『世界の辺境とハードボイルド室町時代 』歴史学者と探検家の目 - HONZ

    歴史学者と探検家は同じ目をしている。といってもインディアナ・ジョーンズの話ではない。安楽椅子探偵とハードボイルド探偵ほど違う存在がともに事件の解決を追い求めるように、古文書を掘り起こして歴史の細部から埃を払う歴史学者と、命をかける大冒険で世界の辺境に旅をするノンフィクション作家とは、実は同じものを求め、同じところを見ている。彼らは異世界を見て、異世界に旅することを知っている人たちなのである。 このは、中世社会史を専門にする歴史学者と探検旅行を旨とするノンフィクション作家の出会いから生まれた。清水克行は『喧嘩両成敗の誕生』(講談社選書メチエ、2006年)で中世における紛争解決から当時の社会のありかたを浮き彫りにした。一方で高野秀行は『謎の独立国家ソマリランド』(の雑誌社、2013年)において、崩壊国家ソマリアの中に奇跡のように生まれたソマリランドという未承認国家を訪れる。はるか過去の史実

    『世界の辺境とハードボイルド室町時代 』歴史学者と探検家の目 - HONZ
  • 『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史 - HONZ

    白人によって作り上げられた「ファストフード帝国」。画一化されていて正直面白みに欠ける反面、汎用性の高さゆえに世界中至るところへ浸透している。恥ずかしながら、書を読む前に「アメリカ文化」としてまず思い浮かぶのはこの印象だった。 しかしその原点にまで遡っていくと、まったく異なる景色が見えてくる。元をたどればそこには画一化とはほど遠い多様さがあり、また必ずしも白人たちが主役だったわけでもない。 アメリカを代表するとされるべ物の中には、実は非西洋にルーツを持っている例が少なくない。ポップコーンは先住インディアン由来のべ物だし、フライドチキンは黒人奴隷と深い関わりを持っている。 外部からの影響の大きさを抜きにして、アメリカ文化を語ることはできない。書はそんな立場から、従来のイメージとは異なるアメリカの実像に迫る一冊だ。 植民地時代〜独立革命期まで遡っていくと、アメリカ文化の形成

    『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史 - HONZ
  • とまどわないペリカン 『ハシビロコウのすべて』 - HONZ

    「動かない鳥」として、大人から子どもまで人気があるハシビロコウ。しかし、意外にも、そのは世に少ない。書は待ちに待った「一冊まるごとハシビロコウ」である。日の動物園で会える13羽の性格や名前の由来などを写真とともに紹介。『ざんねんないきもの事典』の今泉先生監修のもと、謎に満ちたその生態をイラストで徹底解説している。 ハシビロコウという鳥は、眺めているだけで想像力をかきたてられる鳥だ。書もまた然りである。を開いて、最初に目に入った写真(下)では、その個体差に陶然となった。様々な顔つきの人がいるように、彼らも個体ごとに顔つきが相当違うのだ。その顔つきを見比べるのは、ことのほか楽しい。 その後に続く章では、野生のハシビロコウの写真をもとに、出会いから巣立ちまでをストーリー仕立てで紹介している。ジッとして動かない写真はもちろん、大空をはばたく貴重な写真や、お辞儀して求愛している写真などが

    とまどわないペリカン 『ハシビロコウのすべて』 - HONZ
  • 何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史──『世にも危険な医療の世界史』 - HONZ

    現代でもインチキ医療、危険な医療はいくらでも見つけることができるが、過去の医療の多くは現代の比ではなくに危険で、同時に無理解の上に成り立っていた! 書『世にも危険な医療の世界史』はそんな危険な医療史を、元素(水銀、ヒ素、金など)、植物と土(アヘン、タバコ、コカインなど)、器具(瀉血、ロボトミー、浣腸など)、動物(ヒル、人、セックスなど)、神秘的な力(電気、動物磁気、ローヤルタッチ)の五種に分類して、語り倒した一冊である。 実のところ、このは何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史を、簡潔にまとめたものだ。言うまでもなく、「最悪の治療法」は今後も生み出されるだろう。 単なる事例集にすぎないともいえるのだが、それでダレるということもなく、出てくる例があまりにもトンデモでひどいことをやっているのでなんじゃこりゃ! と笑って驚いているうちにあっという間に読み終わってしまう。たとえば、ペス

    何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史──『世にも危険な医療の世界史』 - HONZ
  • 『9つの脳の不思議な物語』脳が脳自身を理解できた日はきっと最高にロマンティック - HONZ

    変だと思われるかもしれないが、評者は自分の人生より他人の人生に興味がある。自分の中では考えもしなかった生き方や着眼点、思考法を知ることにえもいわれぬスリルを感じるのである。読書が好きなのもそういう理由だ。 書の著者も、人々の人生にずっと関心を持ってきた。その好奇心が高じて、イギリスのブリストル大学では脳の研究に没頭し、神経学の学位を取得。卒業後は科学雑誌で編集者を勤め、現在はフリーの科学ジャーナリストとして活躍している。当たり前の話だが、人生と脳は密接な関係にある。なぜなら人間の感覚や動作、経験、記憶、もっと言えば今この文章を読んでいるあなたが見ている世界も抱いている気持ちもすべて、頭蓋骨の中のたった1200~1500グラムほどのブヨブヨした塊が司っているからだ。 書は、著者の最大の興味である「特別な脳」、すなわち普通の人とは違う特殊な能力や体験をもたらす脳を持つ人たちに会うべく世界各

    『9つの脳の不思議な物語』脳が脳自身を理解できた日はきっと最高にロマンティック - HONZ
  • 異なる道筋で進化した「心」を分析する──『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』 - HONZ

    タコというのはなかなかに賢い生き物で、その賢さを示すエピソードには事欠かない。 たとえばタコは人間に囚われている時はその状況をよく理解しており、逃げようとするのだが、そのタイミングは必ず人間が見ていない時であるとか。人間を見ると好奇心を持って近づいてくる。海に落ちている貝殻などを道具のように使って身を守る。人間の個体をちゃんと識別して、嫌いなやつには水を吹きかける。瓶の蓋を開けて、中の餌を取り出すことができるなどなど。 タコには5億個ものニューロンがあり(これは犬に近い。人間は1000億個)、脳ではなく腕に3分の2が集まっている。犬と同じニューロンってことは、犬ぐらい賢いのかなと考えてしまいそうになるが、タコは哺乳類らとは進化の成り立ちが根的に異なるので、単純な比較は難しい。では、いったい彼らの知性はどのように生まれ、成り立っているのか。神経系はコストの高い器官だが、それが結果的に生き残

    異なる道筋で進化した「心」を分析する──『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』 - HONZ
  • 『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる 』音楽家の役割は、顧客を創造すること - HONZ

    今年読んだ新書の中で、文句なしにNo.1の一冊。平易な文章で書かれ、分量もコンパクトだが、奥が深い。 昨年、『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』がヒットして以来、教養とビジネスの関係に注目が集まっているが、書もまた同様の趣きをもっていると言えるだろう。 著者の片山杜秀氏は、クラシック音楽歴史を追いながら、顧客が誰であったかという点にフォーカスを当てていく。さらに顧客のニーズを満たすための要件が、どのように時代を推進する装置になり得たかという解説にも余念がない。だからどんなビジネスマンが読んでも面白い。 この背景には、音楽というジャンルが文学やアートに比べて、時代のニーズの影響をダイレクトに受けやすいという特性がある。 音楽は演奏され、誰かが聴いてくれることではじめて成立する芸術だ。再現するために多大な人的・物的動員を要するジャンルの常ではあるが、事前にスポンサーとの合意を得なけれ

    『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる 』音楽家の役割は、顧客を創造すること - HONZ
    gogatsu26
    gogatsu26 2018/12/12
    カタヤマン
  • 【連載】『全国マン・チン分布考』第5回:男根語の試行錯誤 - HONZ

    放送禁止用語に阻まれた『探偵! ナイトスクープ』の幻の企画が、ついに書籍で実現。かつて『全国アホ・バカ分布考』で世間を騒がせた著者が、今度は女陰・男根の境界線に挑む! 第5回は「男根語の試行錯誤」について。「男根」もまた、京を中心にきれいな多重の円を描いていることが明かされる!(HONZ編集部) 第1回、第2回、第3回、第4回 次に「男根(陰茎)」の分布図にも目を向けてみましょう。「男根」についてのアンケート調査は、「女陰」の資料を集めたときに、同時に行ったものです。口絵の「男根 全国分布図」を眺めると、これもやはりみごとに多重周圏分布を見せています。(※注:男根全国分布図は書籍のみに掲載) 「カモ」だけは新潟以北に限られますが、「ヘノコ」「シジ」「マラ」「ダンベ」はきれいに円を描いています。さらに続く「チンポ」系語は、「(オ)チンコ」「チンボー」「チンボ」を経て、現代の標準語「チンポ」に

    【連載】『全国マン・チン分布考』第5回:男根語の試行錯誤 - HONZ